文庫のタイトルをみて読みたいかも…と思ったのが、続編にあたる「インターセックス」でした。
GIDとかISとか、そのあたりのことがどの程度書かれてるのかなぁという漠然とした興味で。

で、文庫の裏表紙のあらすじだったかなぁ、この本は別の本の続編?にあたるらしいという情報を得て、本来ならシリーズは最初から読みたい私であれば先に古い方を読んでそれから続編を読む、という手順を踏むはずだったのに(^^;、何故かこの本は先に続編のほうを読んでしまったのです。
そういうわけで、後から「エンブリオ」を読むことになってしまい、ミステリ要素は完全に楽しめませんでした(^^;。ある意味自業自得ではありますが。

ですので、とりあえず読んでみようかと思ったアナタ、「エンブリオ」→「インターセックス」の順で読んだほうがいいですよ、ええ。
という注意でありました。…普通気にする人なら言われなくてもそうするとは思いますが(^^;;;;。

では、さて。個別の感想など。

「エンブリオ」
生殖医療に関する実験要素の強い研究をすすめる岸川病院長の物語。
多少(というかかなり)倫理観に欠ける岸川ではあるけれども、医者として不妊あるいは妊娠にまつわる悩みを抱える患者にすれば、彼はある面では確かに救世主なんだろうと思いました。

岸川の、命というものを扱う医者としてのスタンスにブレがないのが凄いと思う。
どこまで人工的に人間という生命を作り出せるのかへの挑戦、不妊カップルの妊娠への協力や、堕胎手技やその活用実験などなど、命を生み出すことへの飽くなき探究心がある。
その一方で、生きている人間への極端なまでの割り切りが凄い。

ある意味、ダークヒーローと見えなくもない岸川は、物語の主人公として魅力的ではありました。

「インターセックス」
こちらの主人公は秋野女医。
岸川の経営する病院に赴任してきた彼女が専門とするのは性分化疾患です。

岸川の病院は、基本が産婦人科小児科なので、出産の取り扱い件数がダントツなわけですね。となると、疾患をもった患者の取り扱い件数(というのかな)も相対的に多いわけで。
本書では、インターセックスと呼ばれる人たちが何故産まれてくるのかをはじめに、そのように産まれついた者が引き受けることになる困難や体験を描いています。

物語の主軸はタイトル通りインターセックス(IS)として産まれて彼彼女たちの辿る(辿った)多種多様な人生物語。主人公が接する何人かの当事者が、自分の人生を振り返るという形でそれまでの半生を語るわけですが、これが…ねぇ。

ISのことを何もしらず、興味を持てる人なら読んでいてナルホドと思ったり有意義だったりするんでしょうけど、多少なりともISの知識がある人からすると、これらの半生の羅列が物語として意味があるの?とうがった見方になってしまう気がします。

当初、物語のインパクトとしてかもしれないけど、岸川がジョン・マネー説を鵜呑みに(?)してたシーンに絶望したよ。まさか産科を扱う医者であり、勉強熱心で研究心旺盛な彼がこの分野に限ってスルーしてたとか、キャラクター造影としてあり得なくない?後に秋野女医が持論を語るときの対比の為でしょうけど、あまりに安易な気がしました。
また、ドイツでの当事者会のメンバーが一人一人半生を語りだしたときには、どんな議事録だよとツッコミ入れちゃったよ(^^;。

まあ、人間には男と女の二種類しか存在しない、と思い込んでいるような人には目新しい小説と認識される…のかなぁ?
でもだったら、もっと当事者の自伝本とか読んだほうが、よっぽど有意義だと思うけど。

ともかく、続編の主軸に対しては個人的にはかなり楽しめる要素が少なくて残念でした。
しかし、「エンブリオ」から続く岸川という医者の落とし前としての意味はあると思います。

「エンブリオ」では、結局岸川の行った事実は、明るみにでません。
そんな中で「インターセックス」では、彼の行動に疑問を抱き、真実を探ろうとする動きが出てきます。
そしてクライマックスで、岸川自身がとった落とし前。
そこまで含めて両者の物語を読み通すという意味で、この続編にも意味があるんだろうと感じました。

文章はとても読みやすく、展開というか構成も素直だと思います。
オススメなのは「エンブリオ」のほうだけど、折角なら両方読んでみてもいいかも。

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