■「雪の断章」佐々木丸美
2009年5月1日 小説、活字本 コメント (2)迷子になった五歳の孤児・飛鳥は親切な青年に救われる。二年後、引き取られた家での虐めに耐えかね逃げ出した飛鳥に手を伸べ、手元に引き取ったのも、かの青年・滝杷祐也だった。飛鳥の頑なな心は、祐也や周囲の人々との交流を経て徐々に変化してゆくが…。ある毒殺事件を巡り交錯する人々の思いと、孤独な少女と青年の心の葛藤を、雪の結晶の如き繊細な筆致で描く著者の代表作。
リンクはあえて、絶版の講談社文庫のほうを。読んだのはこちらなので。しかし、今手にいれようとするなら、創元推理文庫となります。
私の始めての佐々木丸美体験がこの本でした。丁度映画化された時期だったので、今からもうかなり前ですね。しかし著者のほかの作品は結局タイミングがあわなかったってことなんでしょう、次に読んだのは去年創元から出た<館>三部作だったのでした。
そしてそのときこの本が、<孤児>四部作の一冊目であると知ったのです。
そういうわけで先月ぐらいからゆっくり読んでいたのは、<孤児>の二作目『忘れな草』でした。『雪の断章』は内容の詳細は忘れてしまったけれども、一応読んだし…って思って、二作目から読んでしまったのですよ。
いやだって、連作っていうかオムニバスみたいな関係性だと勝手に思っていたからさぁ…。
それが敗因…。
<孤児>シリーズって物語が全部繋がっていたなんてー(涙)。
二作目のクライマックス直前になって、史郎さんが出てきて超ショック…。
ギャー、この人が出てくるって…もしかして、世界設定とか時系列とか、かなり近いところで繋がってるんじゃ…とようやく思い当たったのであります。
長編大好き、長いシリーズ大好き、そしてそれらを時系列に並べて読むの大好きな私には、一作目の記憶薄い中での二作目読了はかなり悔しい…(+_+)。
というわけで、結局二作目を読了後、本書を再読(それでも三回目ぐらい)したのでありました。
読んで見れば、やっぱり思い出すんですよね。固有名詞の記憶に弱いんで、トキさんとか厚子さんとか、二作目の途中でちゃんと名前が出てきてるのに、全然思い出せなかったけど、読み返せば一作目での展開もキャラも覚えてるんだもんなぁ…。
…長い前置きだな(^^;。
本書は、孤児となった飛鳥が、運命の出会いをし、成長していく姿を描いたものです。
佐々木さんらしい、リリカルな文章と、少女のとても固く透明感のある心の描写は、すばらしい。
デビュー作とは思えないぐらいの完成度と特異性が光っています。
物語世界は、当時すでにちょっと古い時代かな?と感じたぐらいですから、今読むと本当にレトロ感があります。
でもこの物語はこの時代だからこそ成り立ったものだとも思うのだけど、だから余計にイマドキの若者にはとっつきが悪いかもしれないですね。
それでも一度この世界に入っていくことができれば、とても深い部分にまで沈み、考え、想像することができると思います。
美しい雪の世界に静かに浸ることが出来る、特上の物語です。
コメント
昔、私も、夢中になって読みました。
佐々木丸美さん独特の世界に、うっとりした覚えがあります。
しばらく絶版で手に入らない状態が続いてたんですが、去年から少しずつ復刊されるようになって嬉しいです。