野田版はこれで三作目。そして完全新作はこれが始めて。
ま、完全新作とはいっても下敷きにオペラがあるのですが。

「八月納涼歌舞伎」第三部の演目は、「紅葉狩」と「野田版愛陀姫」でした。
野田版が目当てで見に行ったわけですが、ちゃんとした歌舞伎を見たことがなかったので、紅葉狩のほうもみることが出来てよかったです。
おかげで、野田版(今回の愛陀姫に限らず)ってのがどれだけ歌舞伎として特異なのかもわかりました(笑)。

登場人物がよくしゃべる。そしてそのスピードが結構速い。あと、人物の所作も早かったと思う。
舞台演劇としてみれば普通だとは思うんだけど、歌舞伎の様式からするとかなりテンポが違うように感じました。
こういう部分は、生粋の歌舞伎ファン(っていう言い方をするのか?(^^;)には、わかりやすい違和感になるんだろうなあ。
年配の方などはセリフを全部聞き取れてるのかしら、と余計な心配をしちゃったよ。

舞台の背景になっていた巻物風の?壁は、私はちょっと面白いなあと思いました。
屏風のような動きは気に入ったんだけど、でも、それが動くときの音が雰囲気をそいでいると感じる部分があったかな。何となく音の軽さが安っぽく見えるっていうか。
その意味で、舞台奥からせり出してくるピラミッドを意識したような色の台(アレ、なんていうんだろう)が出てくるときの音も、コロコロと安っぽくて耳障りだった。
移動することを考えると車(コロ)がついてるのは仕方ないのかもしれないけど、もうちょっとスムースに静かに動いてくれるとまた違った印象になるんじゃないかなあと思いつつ見てました。

しかし、あの象はなぁ…(遠い目)。
いくら元がエジプトの話だからって、あれは不必要でしょう。だってあの時代の日本のあの場面で、象である必然性がないよー。意味不明。
クライマックスの蝶々にもガクっときたし。

舞台美術は全体にちぐはぐな印象をうけました。

部分部分は面白いと感じたものもあったんだけど、妙にまとまりがない感じがして。
あと、二階席からの鑑賞だったことも影響あるとは思うんだけど、舞台がスカスカな印象がありました。
横への広がりはあったとは思うんだけど、奥行き感というか上方の隙間が気になって、そういうのも物足りなさに繋がったように思います。

さて、役者さん。

しょっぱなからアレですが、勘三郎さんって、女形はあんまり似合わなくない?(^^;
巧いか下手かってことよりも、勘三郎さんの公的なパーソナリティってどうしようもなく男性に見えるんだよねぇ。そういうのも含めて女に見せるのが芸だというなら、巧くないってことになっちゃうのかな?そのあたりはよくわからないんだけど。
歌舞伎の女形の女性性は、特に踊りから見えやすいんだけど(私だけかな?)、この舞台では踊りがなかったから余計にそう感じたのかもしれない。

あとしゃべり方が早口で(これは勘三郎さんのほかの役のときにも感じた)、落ち着きがないようにみえる。
濃姫にはもうちょっと気品を感じさせる知的な物言いをして欲しかったなあ。

その点、愛陀姫は悲しみと苦しみが全面に出たキャラになっていて、わかりやすくなっていたと思う。
オペラのあらすじを読んだときに想像したとおりの造詣になっていたっていうか。

パンフ(?)を読んだら、キャストの皆さんが音楽がいいって言ってる人が多かったんだけれども、そんなに強烈にイイっていう風じゃなかった。
西洋の曲らしい旋律は聞こえてはいたけど、やっぱり笛の音色の儚さがメロディラインの力強さを表しきれてないかな〜という感じ。

私は野田さんの舞台でも、全部が全部好きなタイプじゃないんだけど、それでも好きじゃないなりに凄いなぁという部分は毎回感じてきたのよね。
しかし今回はあんまりそういう感じ方が出来なかったのは残念。好き嫌い以前に、よくわからない、というのが正直なところか。

お話としては意外に単純でわかりやすかったとは思うんだけどね。
歌舞伎を素材に、どういう舞台を造りたかったのか。何がやりたかったのか。そのあたりがよく見えてこなかったと思う。

ちょっともったいなかったなぁ。

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