■「リベット」木原音瀬
2008年2月27日 小説、活字本初芝公平は、誰にも知られたくない大きな問題を抱えて暮らしていた。しかし、その悩みと明るく向き合いながら、一人で生きていこうとしていた初芝の心を乱すものがあった。それは、いつも温かく抱き締めてくれる恋人の由紀と、常に初芝の我が侭を聞いてくれる職場の後輩の乾の存在だった。二人は初芝の心を弱くも強くもする。自分の悩みを告げるべきか、初芝は葛藤するが…。
読んでいて、一昔前の少女漫画にはやった(?)白血病を思い出した。
病気もの、悲劇ものって、読み手が物語にのめりこんでいれば共感度が増すのかもしれないけど、どうやら私は一歩下がって読んでる部分があるようで、「重いテーマを持ってきたなあ」と感じるものの、描かれる純愛(?)が自分の感情の外側を滑っていくような、そんな感覚になった。
主人公の彼女の立場は、主人公サイドに感情移入して見ると酷いのかもしれない。でもあれって、多くの人が選択する結論だと思う。
その意味で、乾の感情が、私には純愛に見えなかった。恋の盲目効果ならともかく、そうでないならば、もっともっと乾の戸惑いを書いてもよかったと思う。それほどにHIVは現時点では深刻に考えないといけない病気だと思うんだよね。
だから、物語の最後に、安易に初芝が乾に恋愛感情を示さないというのには納得がいった。というか、そうあってくれて嬉しかった。
単純に彼らが両思いになって、精神的に幸せになりました、なんてやられたら、きっと目も当てられないって思いそうだし。
とまあ、物語にはいろいろ思うところがあったんだけど、相変わらず私はこの作者の文章は好きだなあと思う。
いろんな感情をちゃんと表現している(しようとしている部分も含めて)のがね。
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追記
表紙裏の情報を知り、早速読んだ。
…うーん、まあこういう形ならアリかなあ。初芝の弱さに乾がつけこんだ、っていうようにも読めるけど(^^;。
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