●「野田版 研辰の討たれ」(シネマ歌舞伎、再演)
2008年1月27日 映画赤穂浪士討ち入りのニュースは、江戸から離れたここ近江の国、粟津藩にも伝えられ、剣術の道場はその話題で持ちきりです。しかし一人だけ、赤穂浪士を馬鹿にする人物がいました、もと町人、研屋あがりの守山辰次です。仇討ちなんて馬鹿馬鹿しい、武士といえども潔い死を望まない武士もいる筈だと言い出す辰次を、家老の平井市郎右衛門が叱り付けました。すると現実的で抜け目ない辰次はすぐに態度を変え、剣術に優れた市郎右衛門に剣術を学びたいとお追従を言う始末。主君の奥方、萩の江の前で、市郎右衛門に散々に打ち据えられて、辰次は仕返しに一計を案じますが・・・
初演の時には、気がついたらチケットは売り切れ。
再演は襲名興行ですもんね、チケットなんか手に入るわけもなく、見損ねていた舞台です。
今回再演がシネマ歌舞伎として上映されるということで、上京の日にあわせて観にいってまいりました。
古典的な歌舞伎ってのは、見たことがないのよね。
せいぜい花組芝居で「歌舞伎っぽい」のを見たことがあるぐらいで。
だから、この野田版がどれだけ歌舞伎として異端児なのかはわかりません。
でもとにかく、見やすくって、笑えて、分かりやすくて、面白いです。
歌舞伎初心者向け、とも言えるんじゃないかしら。
お話は、ひょんなことからあだ討ちされることにされてしまった辰次@中村勘三郎が、親を殺された(と思い込んでいる)兄弟(市川染五郎&中村勘太郎)に追われる姿を描いたもの。
喜劇で始まった物語は、悲劇で幕を閉じます。
音声は5.1chだったのかな、ちゃんと舞台左の花道での演技には左側から声が聞こえてくるし、生ものであるお芝居を綺麗に巧く映画として編集されていたと思います。
セリフの言い回しだとか、感情表現の所作だとか、当然歌舞伎の振る舞いなのだけど、演出がやっぱり現代演劇でしたねえ。
途中挿入されるお笑い芸人のパロディ(?)は、バラエティTV番組を知らない人(たとえば私とか(^^;)には半分ぐらいしかわからなくって、そういう生ものな表現は個人的にあんまり好きじゃなかったんだけど、でもそういう類の笑いを歌舞伎に取り入れたという点ではかなりチャレンジブルだったのかな、とも思います。
クライマックスでの主人公たち(あだ討ちされる側と、あだ討ちする側)の周りを取り囲む群衆の表現は、近年の野田舞台を見慣れている人には納得な演出でした。
エンディング、横たわる辰次に静かに振る紅葉の葉(ちょっとデカすぎ(^^;、でも歌舞伎座の後方席にも見せるためには必要なサイズなのかも)が、舞台の余韻を現していてしみじみとしました。
DVDが発売されてます。
シネマ歌舞伎は再演、こちら(DVD)は初演の映像なんですよね。
こっちも見てみなければ。
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