荒廃した地球を復興するため、彼は人間によって創られた。しかし、創造主がつけた傷は己れの生を彼に認識させる。それは世界観を懸けた闘い、そして、残酷な神へと至る道の始まりだった―存在の在り方、魂の所在―『あなたの魂に安らぎあれ』『帝王の殻』につづく三部作、十四年ぶりの完結篇。


単行本が出たときに、火星三部作が完結したということで、前二作を再読したんだよね。
で、本書がやっと文庫化されたので、よみました。…前作、再読しておいて大正解だわ(笑)。

三部作とはいっても、物語はきっちり続いているわけではないので、これだけでもお話は成立してます。
でもやっぱり長編読みとしては、根底にある一つの流れを見出していく作業に醍醐味を感じるわけですね(笑)。

本書の主人公は、アートルーパーの慧慈。アートルーパーというのは、人間の遺伝子情報を操作して人工的に作られた人造人間。
この慧慈が、さまざまな経験を通して、生きるということに意味を見つけ出し、その姿から、ひいては人生とは魂とは、ということについて読者に考えさせる、という作品になっています。

もうとにかく神林節というか、これでもか!というほどの、文章…というか語り口が、たまりません。

言葉の力の偉大さを信じ、それゆえに、絶対に言葉では伝わらないものがあるという信念が、この大作から感じることが出来ます。

「あなたの魂に安らぎあれ」のクライマックスに描写される、あのカタルシスに、こんなに壮大で勇敢な神の姿があったとは…。

これだから、長編・シリーズを読むのをやめられないんだよね。

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