失踪した後輩が通っていたのは、いっぷう変わった料理店。予約のたびに場所が変わり、毎回違う若い女性が食事に相伴してくれるという…。謎めいた料理店で出会う「少し変わった子」たちが、あなたを幻想的な世界へと誘う物語。


短編連作、オムニバスってやつですね。
主人公である大学教授が、不思議なシステムのお店で食事をする話。

…とだけ書くと、全然意味不明で面白くなさそうだな(^^;。
しかし、ちょっと簡単にあらすじが書けない雰囲気の話ではあります。

かなり多作な部類に入るであろう著者の作品の中では、主流を占めないタイプの物語だといえるでしょうね。
キャラクターには森スタイルがこれでもかってぐらい詰め込まれてますけどね、物語の雰囲気、というと、珍しいほうではないでしょうか。
そういう意味で、著者の従来のファンでも好みが分かれそうな感じがします。

一話目を読んで私が感じたのは、森さんが食事をするシーンを軸にすえた物語を書いたということに関する違和感でした。

私は彼のエッセイとかブログとかをチェックする程度には、彼の公開されている情報には接しているほうだと思います。
で、その印象からなんだけど、彼って食べることにあんまり興味がないように見えるんだよね。

おいしい食べ物を食べること、食材に関する興味、料理に対する好奇心、そういった方面への嗜好がほとんど感じられないんだよね。
一日一食しか食べないとか、食事の時間が勿体無いとか、そういう感覚が自分には全くないので、余計に印象に残ってるんだと思うのだけど。

なんていうか、たとえば椎名誠とは真逆な方向性っていうか(笑)。

そういうわけで、だから森さんが料亭での食事シーンがメインの舞台を作るっていうのにびっくりだったんだけど、読んでみたらやはり食べ物の描写がほとんどなかったのに納得(^^;。

ざーっと読んでしまうとつかみどころがなくてぼやんとしたストーリーに見えるのだけど、主人公の思考に寄り添って沈み込んでいくと、とても深い思慮に辿り着いてしまいそうな物語でした。

もしかしたら、失踪したという荒木さんは、彼女の手を取ってしまったのだろうか。
そして、小山さんはそこに陥ることもなく堪能を味わっているのだろうか…。
不思議な読後感がザワリと残りました。

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