1950年、スウェーデンの家庭研究所では、ノルウェーの独身男性の台所での行動パターンの調査を行うことになった。調査員のフォルケは、老年の独身男性イザック宅へ。調査対象とは決して話をしてはいけないという規則だったが、ふたりいつしか話をするようになり、ゆっくりと交流を温めていく。
同じ部屋にいるのに無言でいるときの気まずい空気の妙なおかしさ、会話をかわしてから、ゆっくり広がっていくほのぼのした空気が心地よい。50年代の北欧のインテリアや車など美術にもセンスが感じられ、冬の景色は、しんしんと寒さを感じさせるものの、人間たちは品よく温かくて思わず笑みがこぼれてしまう。『卵の番人』でも斬新でユニークな世界観を披露したベント・ハーメル監督がつくり出した、幸せ気分にしてくれる上質のヒューマンコメディー。


キッチンでの動線を研究する、という目的にも興味を持ったけれども、とにかく私が最初にこの映画を見てみたいなーと思ったのは、他人の家のキッチンの隅で背高な椅子に座って観察する人、という場面を見たから。

ただでさえ狭いキッチンに、高みに座って、キチンと背広を着てノートとペンを手にした観察者、という構図。
シュールというかコメディというか。

一体どういうシチュエーションでこうなったのか、キッチンの動線研究?、しかも独身男性の??、あらすじを知る毎に興味は大きくなっていくわけでありまして、で、ようやくの鑑賞です。

映画はノルウェー・スウェーデンで作られたもので、普段目にする欧米の映画とは、雰囲気が違っていたのも面白かったですね。
雰囲気がたんたんとしていて、映画の舞台となっていた雪深い冬がとてもいい効果を作り出していたと思います。

登場人物は基本的に、研究対象となった老人と、それを観察する男性。
最初は拒絶、それが譲歩になり、小さな親切になり、交流となって、友情となっていく。
その流れがとても自然で、ゆっくりした物語の展開もあわせて、しみじみと伝わってきます。

クライマックスで初めて映しだされる春の緑は、彼らのパートナーシップの芽生えも伺えて、ほっこりと心穏やかになりました。

そうか、彼らは水鳥ではなくクマを選ぶ者同士だったんだな〜と。

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