武島直貴の兄・剛志は、弟を大学に入れてやりたいという一心から、盗みに入った屋敷で、思いもかけず人を殺めてしまう。判決は、懲役15年。それ以来、直貴のもとへ月に1度、獄中から手紙を送る剛志。一方で、進学、恋人、就職と、つかもうとした人生の幸福すべてが「強盗殺人犯の弟」というレッテルによって、その手をすり抜けていく直貴。日を追うごとに、剛志からの手紙は無視され、捨てられ、やがて…。


どこかでこの本の感想を読んだのが、自分で手にとったきっかけ。
その感想では、主人公が就職した先の社長の言葉に対し、「もっともなことを言っていると思う。自分もそれに共感した」というような意味の感想が書いてあった。

で、その社長のセリフ(の抜粋)が、今度文庫になったこの本の裏表紙に書いてあったんですね。

偶然みかけたその感想と、裏表紙の言葉を読んで、私は到底それに納得できなかったので、まずは小説を読んでみた、というわけ。

読み終わって思ったのは、やっぱり私はあの社長の言葉にはうなづけないということ。
加害者家族は、罪に対する罰とはこういうものだと加害者自身に(ひいては、未来の犯罪者予備軍に対し)知らしめるためにも、一般人から差別される必要がある、というような意味の言葉です。
犯罪抑止力としての差別を肯定するというふうに読みました。

でも、それってやっぱり違うと思うんだよなあ。
理想主義といわれようと、どんな理由があろうと、本人自身に咎のない理由で不利益を与える行為は、許されてはならないと思うし…。

物語の中で、主人公はいろいろな差別に遭遇し、その都度自分の人生を考え直す必要に迫られます。
そして、そういう経験を沢山得てしまうことで、最終的にある決意を固め、そしてその結論に責任をもった人生を歩もうと踏み出して、小説は終わります。

主人公の選択は、私は肯定も否定もできないけど、何を選んだとしても彼の苦悩はかわりがないし、そういう意味で間違った選択はしていないように感じました。

もちろん、また別の選択肢もあったかもしれないし、主人公の選んだ結論に否定的な感想を持つ人もいるだろうなと思うけれども、たった一つの正解はないような気がするし…。

読後にいろいろ考えることがあります。
深い物語ですね。

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