●「この胸いっぱいの愛を」
2006年10月8日 映画出張で少年時代を過ごした北九州・門司を訪れた鈴谷は、そこで20年前の自分に出会う。そして自分が1986年にタイムスリップしていることに気づく。そこで彼は、かつて手術を拒否して、難病で亡くなった憧れのお姉ちゃんを救おうと決意するが…。
タイム・トラベラー映画は、歴史を変えてはいけないというのがお約束だったが、本作は未来から来て、人の運命を変えてしまう物語。大切な人を救いたいという一途な気持ちに貫かれた作品。主演は伊藤秀明、ほかミムラ、勝地涼、そして人気脚本家の宮藤官九郎も役者として出演している。少年がそのまま大人になったような、まっすぐな性格の鈴谷を演じる伊藤秀明が好演。
だいたい過去へタイムスリップする話っていうのは、過去を変えてはいけないという基本姿勢があって、交差する人間関係に葛藤する姿を描くことが多いのだが、この映画はそのあたりばっさりいっちゃってます(^^;。
えええ、いいの、そんなに簡単に過去を変えて。みたいな。
メインは、バイオリン弾きの彼女とその彼女を救おうとする青年の話。
そこに、チンピラになるしかなかった青年だとか、過去の過ちをずっと胸に潜めて後悔していた青年だとかが出てくるのだけど、ちょっと映画としては蛇足だったかなあ。
タイムスリップした状況(理由)を考えた場合、メインとなる青年ひとりだけがそういう状況になったというより、近くにいた数人も一緒に、というのはわからなくもない。
でもさあ、少なくとも映画では、他のキャラたちがうまくいかされてなかったような気がする。
こういうエピソードもありましたよ、みたいな、なんだかとってつけた脇筋みたいで。
特にクドカンの話がね。勿体無かったなあ。
ともあれ、最後までみて思ったのが、歴史を変えたことで人生の変わった彼女が、あれで本当に幸せだったのかなあ?ということ。
彼女に対する感情を昇華させた青年は、そりゃ自己満足みたいな部分はあったんだろうけど、最後に青年が誰だったのかをしった彼女の表情からは、満足感というよりも諦めというか、幸せそうには感じられなかったんだよね…。
そして、クライマックスで描かれるあの世界で、本当に安らいだ表情で口付けを交わす彼と彼女の姿が、あまりにも現実世界での彼女の表情とは違って見えて、結構シニカルなイメージを受けました。
少なくともハッピーエンドだったようには見えなかったのよね…。
原作はもうちょっと各キャラクターたちが細かく表現されてるのかしらん?
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