家政婦として働く「私」は、ある春の日、年老いた元大学教師の家に派遣される。彼は優秀な数学者であったが、17年前に交通事故に遭い、それ以来、80分しか記憶を維持することができなくなったという。数字にしか興味を示さない彼とのコミュニケーションは、困難をきわめるものだった。しかし「私」の10歳になる息子との出会いをきっかけに、そのぎこちない関係に変化が訪れる。彼は、息子を笑顔で抱きしめると「ルート」と名づけ、「私」たちもいつしか彼を「博士」と呼ぶようになる。

居間にいるとずっとついてるTVがうるさくてかなわないので、暖房もない部屋にこもって本を読んでました。
凍える…。

しかしこの物語はなかなかよかった。

単行本になったときに良い評判を聞いていたのと、今度映画になるということだったので、文庫を手にいれてみました。

老数学者の博士がいいですね。
語りの主人公となっている家政婦さんも、博士との距離感が絶妙で、恋だ愛だといった情熱的なものとは対照的な、静かで深い情愛が感じられて、ほんわかとしました。

それにしても、物語を支える数学への知識、博士が知っているのは設定上当然なのかもしれないけど、実際のところこの物語を記した著者はどちらかというと文学者なわけで、その意味で著者には感心しきり。

そしてまた、完全数 28 と、タイガースが見事にかかわりあっていて、クライマックスで円が綺麗に閉じられた印象を抱きました。

すばらしい。

映画のほうはこの美しさをどう表現するのか、楽しみであり怖いようでもあります。

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