●大統領の理髪師

2005年10月11日 映画
1960〜70年代の韓国で、大統領官邸のある町に住んでいたことから、大統領専属の理髪師となったハンモ。不正選挙や軍事クーデター、北側の脅威などを背景に、彼の一家の物語が、息子が語るナレーションとともに綴られる。韓国の激動期が市井の人々の目線でとらえられ、ほのぼのとした後味に包まれる珠玉作だ。
主演のソン・ガンホが『殺人の追憶』と同様、本作でも計算しつくしたような素晴らしい演技をみせる。初めて大統領の髪を切るときの緊張感から、息子の病気を治そうと必死になる父の顔までを、さまざまな表情で演じ分け、すんなり共感させられるのだ。本作に描かれるエピソードの多くはユーモアというオブラートに包まれて描写されるため、随所で笑いを誘うのだが、描かれている事件自体は、かなりシリアス。


特別な思想も理想も抱えることなく、日常を普通に過ごしていただけの理髪店の亭主が主人公。
町に大統領が過ごすこととなり、そこでただ一軒の理髪店の亭主であったがために、大統領の理髪師として働くこととなった。

舞台が韓国なので、詳しい政治的歴史的背景はよくわからないのですが(てか、舞台が日本でもあんまり詳しくないんだけど)、映画で描かれる背景からすると、日本の学生運動が盛んな頃のような雰囲気なのかしらね。

田舎町では、政治通ぶった男が町の皆に発破をかけたりと盛り上がっていたりするんだけど、主人公は積極的にそれにかかわりたくない風。

ただ主人公は、その元気のいい男にはいつも世話になっているし、自分よりも学があるような気がするので、「あいつが言うなら、そうなんだろう」といった納得の仕方をしている、フツーな小市民なんだね。

そういう様子が、一見丹精な顔立ちをしているんだけど、飄々とした表情で普通を演じていた男優さんが、巧かったなあと思いました。

大統領の付近で働くということは、いやおうでも政治に巻き込まれるということでもあり、後半はそれによって息子に危害が加わることになろうとは。

前半の理髪師としてのコミカルな男の話が、後半は息子を助けようと必死な父親の話になり、ちょっと雰囲気の違いに慣れなかった。

気に入ったエピソードは、髭剃りのシーンでしょうか。

大統領の髭を剃るときには、一声かけてお許しをもらってからにしろ、と当初キツク言われていた主人公。
刃物を喉元近くに持っていくという行為は、たしかに命を預かっているようなものだし。

そうやって10年以上も大統領の理髪師を勤めた主人公に、その日大統領が「もう声をかけなくてもよい」といって主人公の肘に手をかけるところが、よかった。

朴訥にただ理髪師としてだけ大統領に接してきた彼のことを認めた、静かなセリフのシーンでした。

だから、クライマックスのところで息子の為に目を削るのに何度もためらった主人公の気持ちがよく伝わったなぁ。

好みとしては後半の雰囲気はあんまり好きじゃなかったんだけど、まあなかなかに楽しめました。

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