★「いまのきもち」中島みゆき
2004年11月24日 音楽1.あぶな坂
2.わかれうた
3.怜子
4.信じ難いもの
5.この空を飛べたら
6.あわせ鏡
7.歌姫
8.傾斜
9.横恋慕
10.この世に二人だけ
11.はじめまして
12.どこにいても
13.土用波
そんなに古いファンでもないせいで、みゆきさんの初期の曲にはあまり馴染みがない。
だからか、このアルバムに収録されている曲に、特別な思い入れのあるものが少なく、私にとっては新譜とあまりかわらない印象となったように思う。
しかし、その中でも特別な曲があって、それが「傾斜」。
「傾斜」を始めて聞いたのは、夜会のDVD。たしかVol.3の「邯鄲」だったはず。
見た人ならわかると思うけど、あの中での「傾斜」の迫力は物凄いものがあって、たとえDVDからでも強いインパクトを感じたのだから、ライブだったらもっと強いものを感じられたのだろうと思う。
「傾斜」の歌詞は、老年期にあるのであろうと思われる人物を中心においたもので、年齢を重ねるということを重々しく表現していた。
夜会の物語の中ではみゆきさんは老婆を演じていて、そのシチュエーションも重なって「としをとるのは すてきなことです」と歌う姿に、深い、ひと言ではいいあらわせない感情が沸き立ったのを、今でもはっきりと思い出せるほど。
そして夜会のDVDを見終わったあと、実は「傾斜」が過去のアルバムですでに発表されているものであり、そしてそのアルバムの発表当時のみゆきさんの年齢を知って、再び愕然とする。
「傾斜」がアルバムに始めて収録されたのは、『寒水魚』で1982年に発表されている。
みゆきさんは30歳になったところだ。
30って一般に、人生や老いを表現するには、凡人にはまだまだ若輩だと思われる年齢だと(自分を省みて)思うのだが、どうだろう。
ともあれ、今回のアルバムで「傾斜」が収録されると知ったとき、この意味深長な歌をはじめて聞いたときのショックを思い出して、今度はどのような姿の歌になるのか、期待半分不安半分抱えていた。
というわけで、『いまのきもち』の「傾斜」です。
思ったより曲のラインが変わってないなぁというのが、最初の印象。
そして、以前のアレンジに比べてバックの演奏がおとなしくなっている分、歌声による力がとても増しているのが印象深い。
そして、全体に老いを肯定している(受け入れるしかない?)姿を歌っていながらも、二番のサビの「そうじゃないですか」のひと節に、「(本当にそうなの?)」と悪魔的にささやきかけられたような響きを感じて、ゾクリとさせられた。
鳥肌がたったよ。ホントに。
語彙の貧困なせいでうまく表現できないのがもどかしい限りだけど、ああやっぱり凄いなぁとしみじみと実感したアルバムでした。
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