自動走行する移動手段という意味での自動車とは違う、人間の感情を揺さぶるものとしての“クルマ”。
そのクルマを巡る物語。

<私>が子安と一緒に子どもにかえったみたいに夢中になってクルマを作っていく過程が気持ちがいい。
恐らく自動車の構造を知り、それに興味のある人が読むと、一層楽しめる物語だと思う。

その点で、私はわからない単語ばかりで(意味はもちろん物語中いろいろと説明があるのだけど)、主人公たちの興奮に一緒になって共感できなかったのが残念。

その意味では、後半となる第二部では、全く違う種族が人間という生き物を探る手段としてクルマを造り始めたというストーリーのほうが読みやすく感じた。

そして、エピローグともなる第三部で物語の円が閉じたのを読んで、つくづくと著者の物語を読んできてよかったと感じた。

解説にもあったのだけど、確かに当初著者は機械側に傾倒した嗜好を持っているようで、だから人間へは冷めた視点があったように思ったのだけど、それが本書で視点がだんだんと人間の側に剥き始めてきたのがわかるように思った。

機械へ感情を傾ける人間の側を見つめる視点。

途中に思想というものへの哲学的な問答や、機械工学の発展に関する洞察など濃い話題を挟みながらも、エンターテインメントとして読めるSF長編です。

著者の作品ではお馴染みの「猫」も、ちゃんと存在感をもって健在(笑)。

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